▶ わきがと腋窩多汗症

ワキガとよくまちがわれるものに「腋窩多汗症」があります。
他でも述べているように、ワキガの原因となるのは、
アポクリン腺からの汗によるものですが、
もうひとつの汗腺であるエクリン腺から出る汗が
異常に多い状態が多汗症です。
そのため、通常は臭いや服の黄ばみなどは発生しません。
耳垢も乾いている状態です。

ただ、一般的に、アポクリン腺は興奮時や緊張時、
また温度変化などに反応して分泌されることが多く、
おまけにこのような「精神性発汗」の際には、
エクリン腺からの汗も多く分泌されるため、
汗の量とワキガのニオイの強さは一致することが多いのが普通です。

実際、自分でワキガと多汗症を区別するのは難しいものです。
汗腺の違いはありますが、ワキガは多汗症を合併することが多い
ともいわれています。
ワキガの人で多汗症の場合は、エクリン腺から分泌された汗が
蒸発する際にニオイを拡散させてしまい
ワキガの臭いが強くなることも確かです。

ただし、いくら多量の汗をかいたとしても、
運動後の代謝や気温上昇に適応するための体温調節であるならば、
それは至って正常な発汗であって、この場合、長時間放置しない限り、
ほとんど臭いを発することはありません。
汗はそのままにしておけば、臭いを放ちはじめますが、
洗って汗を落とせば完全に無臭になります。

多汗症というのはつまり、目立った運動をするわけでもなく、
暑いところにいるわけでもないのに、多量の汗をかく状態であって、
わきがに至るような臭いを発する可能性のある発汗があるということです。

こういった腋窩多汗症(えきかたかんしょう)の方は
大量の汗をかいて衣類の表面まで汗がにじみ出てきてしまうのが
最大の悩みとなる訳ですが、特に女性の方は
腋窩多汗症で有る無しにかかわらず、シャツやブラウスなどの
わきの部分が濡れている事を周りに気づかれないように
色々な工夫をしています。

汗わきパッド」という商品がありますが、
わきの下の汗を気にする人はそれが手放せません。
汗わきパッド」とは衣類のわきの部分にあてて、
わきの下から出てくる汗を吸い取ってくれるというものです。
汗の量が多い方や、そうでなくとも神経質な方は1〜2時間おきに
換える人もいます。

そして、それ以外の方にも、よく使われるのが制汗剤ですが、
それ自体は汗を止める効果がありません。
逆に制汗剤の使いすぎでわきの下に色素が沈着してしまったり、
衣類にシミがついてしまう事もあります。

しかし、実際に日常生活に支障をきたす程重症な
腋窩多汗症の方はとても少ないようなのです。

多くは気持ちの問題で
周りにわきの下が濡れているのを見られるのが恥ずかしい
という気持ちから汗を隠そうとする行動をとるのです。
ところが、緊張性の腋窩多汗症の方は気にすれば気にする程、
汗が出てきてしまい、一度気にするとそのまま抜け出せずに泥沼化します。

更に汗に黄色い分泌物が混じっていたりすると
悩みは更に深くなってしまいます。
そういった場合は悩みが酷くなる前に
医院を受診するのもひとつの解決方法になります。

ワキガが強い人は、多汗症である場合が多いようです。
しかし、多汗症でもワキガはさほど臭わない、
というケースもあります。ですので、

ワキガ=多汗症

と考えるのは間違いです。
多汗症は脇の下に限らず体全体で多く汗をかくものですが、
体質以外に、ストレスが原因の多汗症もあります。

このように「ワキガ臭い」と「汗臭い」は違うのです。
ワキガの臭いは清潔にしても消せないか、
あるいはすぐに戻ってしまう特有のものです。
不潔な状態にしているときの汗の臭いとは全くの別物なのです。

今まで述べたように、わきの下に沢山汗をかくからといって
すぐに腋窩多汗症やワキガだとは限りません。
単なる汗かきなのか、多汗症なのかという明確な診断基準はないのです。

最終的には医師にしか判断できないのですが、
次のチェック項目に当てはまる方は腋窩多汗症の疑いがあるので
チェックしてみてはいかがでしょうか。



【Check 01:汗が一日中止まらない】


人は体を動かしたり、暑い所に行ったりすると
わきの下に汗がにじんできます。
体温調節をするために体のいたる所に汗腺が分布してるので
脇の下に限らず全身から汗が出てきます。これはごく自然な事です。

しかし、汗をかくような理由がないのに朝から晩まで
わきの下が常に湿っていたり、何もしていなくても
常にわきの下が濡れてしまっているようなら
腋窩多汗症(えきかたかんしょう)の可能性が高いです。

汗の度合いはと言うと、腋窩多汗症の場合
シャツの袖までびっしょり濡れてしまうのが殆どです。
ひどいケースだと腕を上げたとたん汗がしたたり落ちてズボンまで
汗が流れ落ちてベルト付近に汗が溜まる程です。
この様に一日中わきの下から汗がしたたり落ちている症状を
「持続的な腋窩多汗症」と言います。

ワキガの臭いはアポクリン汗腺が元になってワキガ特有の臭いが出ます。
しかし、腋窩多汗症はわきがの臭いの元のアポクリン汗腺よりも
浅い場所にあるエクリン汗腺の異常で発生します。
エクリン汗腺は無臭で水っぽい汗を出す器官です。
運動や風邪などによる発熱の時に出る汗で、
体温を調整する役目を持っています。

持続的な腋窩多汗症というのは、
この機能が暴走してしまっている状態です。
この時、ワキガ体質でない人はワキガの臭いの元の
アポクリン汗腺は発達していない為
汗が多いというだけで、ワキガの臭いが出る事はありません。



【Check 02:緊張すると異常な量の汗が出てくる】


冷や汗というのをご存知でしょう。
緊張した時などに汗をかくのは珍しい事ではありません。
しかしその量が異常なほど多かったり、
少しの緊張でもわきの下から多量の汗が出てくる事がある場合は、
緊張性の腋窩多汗症」の可能性があります。

緊張性の腋窩多汗症というのは精神的に緊張した時にだけ、
わきの下から多量の汗が出てきてしまいます。
しかし、家に居たり、会社での仕事が終わって親しい友人と
過ごしたりというようなリラックスしている状態に戻ると
途端に汗はひいてしまいます。
これが「緊張性の腋窩多汗症」です。

一日中汗が出っぱなしの持続性の腋窩多汗症との違いは、
時間が経つにつれ、その場の状況や、雰囲気、あるいは人などに
慣れてくると症状が治まっていくという点です。

これは持続的な腋窩多汗症と違い、
エクリン汗腺そのものが暴走してしまっているわけではありません。

精神的な緊張により、脳が「汗を分泌せよ」とエクリン汗腺の動きを
調節している神経に働きかけ、
エクリン汗腺から多量の汗が出てくるのです。
腋窩多汗症でなくても、緊張した事で汗をかくのは珍しい事では無く、
普通の事ですが、一時的な腋窩多汗症は緊張の度合いが強い上に
一度緊張してしまうと、なかなか緊張が解けません。

持続的な緊張の結果、脳からの命令が出続け、
止めどなく多量の汗がわきの下から出てしまうのです。
緊張性の腋窩多汗症は精神的な事が原因なので、
クセになりやすいと言われています。

緊張を繰り返し、その都度エクリン汗腺が刺激され、
エクリン汗腺自体が鍛えられて汗が出やすくなってしまのです。
また、緊張性の腋窩多汗症でワキガを併発している人は
とてもやっかいな事になります。
● 汗をかくとワキガ臭が出てしまうのではないか?と緊張する。
 ↓
● 汗をかかない様に気を使う。
 ↓
● 更に緊張が増す。
 ↓
● 汗をかきたくないのに汗をかいてしまう。
 ↓
以下無限ループ。
こんな事になってしまうのです。